CPUの性能比較表を見ると、上から順に並んだスコアが目に入ります。ですが、その順番どおりに買うと確実に損をします。
理由は単純で、ゲーム性能の上位4モデルは実測でほぼ横並びなのに、価格は11万円以上違うからです。
このページでは、まずゲーミングとマルチスレッドの序列を棒グラフで示し、そのうえでスコアの表には現れない判断材料をまとめました。詳しい選び方はCPUの選び方で解説しています。
先に結論
- ゲーム最優先なら9800X3Dで足ります
- 62,000円。上位モデルを買っても、ゲームのfpsはほとんど変わりません。価格.comの売れ筋1位(3,452商品中)でもあります
- 制作も本気でやるなら多コアです
- 動画編集や3D制作ではコア数が効き、ゲーミングとは順位が入れ替わります
- 予算を抑えるならCore Ultra 5 250K Plusです
- 38,980円。ゲーム性能で同価格帯のRyzenを上回り、マルチスレッドは約2倍です
- ソケットの寿命も判断材料になります
- AM5は2029年まで。Intelの現行LGA1851は次世代Nova Lakeと互換性がありません
現行CPU ゲーミング性能スコア
フルHDなど、CPUがボトルネックになりやすい場面での目安です。3D V-Cacheを積んだX3Dが上位を占めます。
現行CPU ゲーミング性能スコアの目安
フルHD想定の目安スコア(概算・大きいほど高性能)
2026年に加わったモデルを補足します。Ryzen 7 9850X3Dは9800X3Dのマイナーチェンジで、変わったのは最大ブーストクロックが5.2GHzから5.6GHzに上がった点だけです。Ryzen 9 9950X3D2 Dual Editionは、2つのCCDの両方に3D V-Cacheを載せた初のモデルで、L3キャッシュ総容量208MBはRyzenシリーズ史上最大です。Ryzen 7 7700X3DはZen 4世代に追加された8コアのX3Dで、2026年7月17日に国内発売されました。
Intel側は2026年3月26日に「Core Ultra 200S Plus」(Arrow Lake Refresh)として270K Plusと250K Plusが登場しています。270K Plusは8P+16Eの24コアで、Core Ultra 9 285Kとほぼ同じ構成が299ドルという値付けです。
ゲーム性能と価格は比例しません
ここが、スコア表を見ているだけでは分からない部分です。上位モデルの実売価格を並べます。
| モデル | 実売価格 | ゲーム性能 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| Ryzen 9 9950X3D2 | 約178,000円 | 9950X3Dと同等 | 制作向け。ゲームでは価格差が回収できない |
| Ryzen 9 9950X3D | 104,980円 | ほぼ横並び | 16コア。ゲームと制作の両立向け |
| Ryzen 7 9850X3D | 74,980円 | ほぼ横並び | 9800X3Dのブースト+400MHz版 |
| Ryzen 7 9800X3D | 62,000円 | ほぼ横並び | 売れ筋1位。ゲーム目的ならここで足りる |
Ryzen 9 9950X3D2は、両CCDに3D V-Cacheを載せるという構造上の進化があり、AMD自身も「第2世代の3D V-Cacheテクノロジーをベースに、さらなる低レイテンシー化とスループット向上を実現する」と説明しています。実際、DaVinci ResolveやBlender、大規模なソースコードのビルドでは9950X3D比で5〜10%の性能向上が確認されています。
ところがゲームでは伸びませんでした。発売時のレビューでは17ゲーム平均で9950X3Dに対して+0.8%にとどまり、複数の海外レビューでも9800X3D・9850X3D・9950X3D・9950X3D2のゲーム性能はほぼ同等という評価で一致しています。場面によっては9800X3Dが上回ることもあります。
ちもろぐ Ryzen 9 9950X3D2 Dual Edition 検証
つまり、ゲームだけが目的なら62,000円の9800X3Dで打ち止めです。11万円上乗せしても、増えるのは制作性能とコア数であってfpsではありません。価格.comの売れ筋ランキングで9800X3Dが1位に立っているのは、この事実が広く知られた結果と言えます。
なお9950X3D2には例外もあり、Escape from Tarkovのように大量のスレッドを使うタイトルでは、条件次第で明確な伸びが出る場面が報告されています。遊ぶタイトルが決まっている人ほど、平均値ではなくそのタイトルの検証を見る価値があります。
X3Dが効くのは限られた場面です
そもそも3D V-Cacheが強いのは、CPUがボトルネックになる条件に限られます。効き幅の実例を挙げます。
- 軽いゲームを高fpsで動かすときは大きく効きます
- オーバーウォッチの低画質では、Ryzen 7 7700X3Dが同世代の非X3Dである7700に対して約1.45倍のフレームレートを記録しました。5800X3Dと5800Xの比較でも約1.25倍です
- 重いゲームでは順位が逆転することがあります
- モンスターハンターワイルズやサイバーパンク2077といった重量級では、5800X3Dを新しい7700が上回る結果が出ています。キャッシュ容量よりコア性能とクロックが効く領域です
- 解像度を上げると差は消えます
- WQHDや4KではGPUが先に限界を迎えるため、どのCPUでもfpsがほぼ同じになります
- そもそもCPUが上限になるタイトルは限られます
- 当サイトで確認できた範囲では16本です。詳細はCPUが上限になるゲーム一覧にまとめました
言い換えると、フルHDで競技系タイトルを高fpsで回す人にはX3Dの価値が大きく、WQHD以上で重量級を遊ぶ人にとっては投資効率が落ちます。自分がどちらかを先に決めてください。240fps・360fps・500fpsを出す組み方でも、高fpsを決めるのはGPUではないという話を扱っています。
レビューによって結論が割れる理由
CPUの比較記事を複数読むと、同じ組み合わせで正反対の結論に出会うことがあります。実際にいま起きている例を挙げます。
Core Ultra 7 270K PlusとRyzen 7 9800X3Dの比較です。国内の実機検証では、オーバーウォッチ2の低画質で270K Plusが9800X3Dを上回り、モンスターハンターワイルズでもほぼ同等という結果が出ました。記事の結論も「多くのシーンで9800X3Dを上回る」というものです。
一方でTom’s Hardwareの17ゲーム平均では、270K Plusは9800X3Dに対して約20%下という結果になっています。100タイトル超を集計するデータベースではさらに差が開きます。
- 検証タイトルの構成で結果が変わります
- 軽い競技系タイトルが多いとIntelが有利に出やすく、重量級やキャッシュに敏感なタイトルが多いとX3Dが伸びます
- メモリの設定が効きます
- Core Ultra 200S PlusはDDR5-7200まで公式対応し、さらに上を狙う設定もあります。どの速度で回したかで数字が動きます
- 解像度と画質設定が効きます
- 低画質でCPU差を強調する検証と、実使用に近い設定での検証は別物です
- 1本の平均値ではなく複数の検証を見るのが安全です
- 当サイトのスコアも序列をつかむための概算であり、絶対値ではありません
このページのスコアは、広く多数のタイトルで平均した場合の序列に寄せています。特定のタイトルだけを遊ぶなら、そのタイトルの検証が優先です。
現行CPU マルチスレッド性能スコア(制作向け)
動画編集や3D制作など、多くのコアを使う処理での目安です。コア数の多いモデルが上位になり、ゲーミングとは順位が入れ替わります。
現行CPU マルチスレッド性能スコアの目安
多コア処理(制作向け)の目安スコア(概算)
ここで注目したいのがCore Ultra 5 250K Plusです。199ドル(国内38,980円)という価格で6P+12Eの18コアを積んでおり、ゲーム性能で同価格帯のRyzen 5 9600Xを上回りながら、マルチスレッドでは約2倍という評価が出ています。上位の270K Plusとのゲーム性能差も3%程度です。予算を抑えつつ配信や編集も視野に入れるなら、現状もっとも効率の良い選択肢です。
型番末尾に「F」が付くモデル(内蔵GPUなし)や「K」の付かない通常版は、同名モデルと性能はおおむね近く、価格や内蔵GPUの有無で選び分けます。グラボ搭載PCでも内蔵GPUを残すべきかはこちらで解説しています。
なお、Core Ultra搭載モデルは「AI対応」と案内されることがありますが、デスクトップ版のNPUは13 TOPSにとどまりCopilot+ PCの基準(40 TOPS以上)には届きません。詳しくはNPU・Copilot+ PCはゲーミングPCに必要かで解説しています。
ソケットの寿命で選ぶという視点
いま買うCPUが、次のCPUに載せ替えられるかどうかの話です。数年後の出費に直結します。
- AMDのAM5は2029年までサポートされます
- Computex 2026でAMDが公式に表明しました。従来の「2027年以降」という表現から、初めて明確な終期が示された形です
- Zen 6は載せ替えで対応できる見込みです
- 現在のマザーボードのまま次世代CPUへ移行できるため、CPUだけの買い替えが成立します
- IntelのLGA1851は次世代と互換性がありません
- 次のNova Lakeは新しいLGA1954へ移行し、LGA1851ともLGA1700とも互換性がないと報じられています
- AM4は10年続いた実績があります
- 2026年にSocket AM4は10周年を迎え、記念モデルのRyzen 7 5800X3D 10th Anniversary Editionが6月25日に発売されました
この差は、価格表だけを見ていると見落とします。たとえばCore Ultra 7 270K Plusは57,980円で9800X3Dより約4,000円安いのですが、将来CPUだけ載せ替えたくなったとき、AM5なら選択肢が残り、LGA1851では残りません。マザーボードごと買い替える前提なら気にしなくてよい話でもあるので、自分がどちらのタイプかで判断してください。
なお記念モデルのRyzen 7 5800X3D 10th Anniversary Editionは62,680円で、9800X3D(62,000円)や7800X3D(54,980円)より高価です。性能で選ぶ製品ではなく、AM4のマザーボードを使い続けたい人向けの延命策と考えてください。新規に組むならAM4は選びません。
予算帯ごとのおすすめCPU
ゲーミングPCのCPUは、組み合わせるGPU(=予算帯)に釣り合わせるのが基本です。ゲームはGPUが性能を決めやすいので、まずGPUに投資し、CPUはそれに見合うものを選ぶと無駄がありません。
| 予算帯 | GPU | おすすめCPU |
|---|---|---|
| 20万円台 | RTX 5060 Ti 16GB | Ryzen 7 7700/Core Ultra 5 250K Plus |
| 30万円台 | RTX 5070 | Ryzen 7 7700X3D/7800X3D |
| 40万円台 | RTX 5070 Ti | Ryzen 7 7800X3D/9800X3D |
| 50万円台 | RTX 5080 | Ryzen 7 9800X3D |
ポイントは、最上位のX3Dを買ってもGPUが追いつかなければ意味がないことです。中位帯で「GPUは控えめ+CPUだけ最強」にすると、ゲームではGPUがボトルネックになり、お金が活きません。各価格帯の詳しい構成は次の記事へどうぞ。
- 20万円台のおすすめゲーミングPC(RTX 5060 Ti 16GB)
- 30万円台のおすすめゲーミングPC(RTX 5070)
- 40万円台のおすすめゲーミングPC(RTX 5070 Ti)
- 50万円台のおすすめゲーミングPC(RTX 5080)
- 予算別ゲーミングPCの選び方(全体像)
前世代・旧モデル ゲーミング性能スコア
買い替えの参考に、前世代以前の主要CPUも同じ基準で並べました。X3D系は世代をまたいでも強いことが分かります。
前世代・旧モデル ゲーミング性能スコアの目安
現行と同じ基準のゲーミング目安スコア(概算)
このグラフは買い替えの判断にも使えます。目安として、スコアが1,500程度上がらないと体感は変わりにくいと考えてください。たとえばRyzen 5 5600X(6300)から9800X3D(9650)なら明確に変わりますが、Core i7-13700K(7900)から270K Plus(8400)では、CPUを替えるよりGPUに使ったほうが体感が伸びます。
Intel 13/14世代を中古で選ぶときの注意
価格.comの売れ筋には、いまもCore i7-14700K(56,094円)やCore i9-14900K(71,526円)が入っています。安く手に入る場面もありますが、この世代には固有の注意点があります。
- Vmin Shift Instabilityという不具合がありました
- マイクロコードの不備と過大な電圧設定が重なり、一部の個体が不安定になる問題です。Intelが原因を公表しています
- 対策のマイクロコードは配布済みです
- 2024年9月の0x12Bに続き、0x12Fが提供されています。BIOSを最新にすれば適用されます
- ただし劣化は元に戻りません
- マイクロコードは未発症の個体を守るもので、すでに不安定になった個体は交換するしかありません
- 保証は購入から5年に延長されています
- 対象製品は通常の3年から2年延長されました。中古で買うなら購入日と残りの保証期間を確認してください
新品で組むなら現行世代を選ぶほうが安心です。中古グラボは買っていいのかでも同じ考え方を扱っていますが、価格差が小さいときにわざわざ古い世代を選ぶ理由はありません。
ノート向けCPUは別物です
同じ「Core Ultra 7」でも、デスクトップ版とノート版はまったく違う製品です。ノート版は消費電力の枠が小さく、筐体の冷却性能でも性能が変わります。
ノート向けの序列はノート用CPU性能比較に、GPU側はノート用GPU性能比較にまとめました。ノートを検討している場合は、そちらの数値で判断してください。
よくある質問
Q.ゲーム用に一番いいCPUはどれですか?
A.実測の序列ではRyzen 7 9850X3Dが最上位ですが、9800X3D・9850X3D・9950X3D・9950X3D2の4モデルはゲームでほぼ横並びです。9950X3D2は9950X3D比で17ゲーム平均+0.8%にとどまりました。価格は62,000円から178,000円まで開くので、ゲームだけが目的なら62,000円の9800X3Dで足ります。制作も両立したいなら、マルチスレッドも強い9950X3Dや9950X3D2が選択肢になります。
Q.スコアの数値はどう見ればいいですか?
A.序列をつかむための概算です。実測ベンチの絶対値ではありません。同じCPUの組み合わせでも、検証タイトルの構成・メモリ設定・画質設定によって結果が変わります。実例として、Core Ultra 7 270K PlusとRyzen 7 9800X3Dの比較では、国内の実機検証で「多くのシーンで270K Plusが上回る」とされる一方、Tom's Hardwareの17ゲーム平均では約20%下という結果が出ています。遊ぶタイトルが決まっているなら、そのタイトル単体の検証を優先してください。
Q.X3Dはどんな場面で効きますか?
A.CPUがボトルネックになる条件、つまりフルHDで軽いタイトルを高fpsで回す場面です。オーバーウォッチの低画質では、7700X3Dが非X3Dの7700に対して約1.45倍を記録しました。逆にモンスターハンターワイルズやサイバーパンク2077のような重量級では、5800X3Dを新しい7700が上回ることがあります。またWQHDや4Kに上げるとGPUが先に限界を迎えるため、CPU差はほとんど消えます。
Q.予算を抑えたいのですが、どれが効率的ですか?
A.Core Ultra 5 250K Plus(38,980円)です。199ドルという価格で6P+12Eの18コアを積み、ゲーム性能で同価格帯のRyzen 5 9600Xを上回りながら、マルチスレッドでは約2倍という評価が出ています。上位の270K Plusとのゲーム性能差も3%程度なので、この価格帯では効率が良い選択です。
Q.AMDとIntel、どちらのソケットが長持ちしますか?
A.AMDのAM5です。Computex 2026でAMDが2029年までのサポートを公式に表明しており、Zen 6も載せ替えで対応できる見込みです。Intelの現行LGA1851は、次世代のNova Lakeで採用される新しいLGA1954と互換性がないと報じられています。マザーボードごと買い替える前提なら気にしなくてよい話ですが、CPUだけ載せ替えたい人にとっては差が出ます。
Q.いま使っているCPUから買い替える価値はありますか?
A.本記事のスコアで1,500程度上がるなら体感が変わります。Ryzen 5 5600X(6300)から9800X3D(9650)のような差なら明確です。逆にCore i7-13700K(7900)から270K Plus(8400)程度の差では、CPUを替えるよりGPUに使ったほうが伸びます。また解像度がWQHD以上なら、そもそもCPUの影響が小さくなります。
Q.ゲーミングとマルチスレッド、どちらのスコアを見ればいいですか?
A.ゲーム中心ならゲーミングスコア、動画編集や3D制作も行うならマルチスレッドスコアです。両方やるなら両スコアのバランスが良いモデルを選びます。なおX3Dはゲーミングで上位、マルチスレッドでは中位に落ちるため、順位が大きく入れ替わる点に注意してください。
Q.Core i7-14700Kなど13/14世代は買っても大丈夫ですか?
A.Vmin Shift Instabilityという不具合があった世代です。対策のマイクロコード(0x12B、続いて0x12F)が配布済みで、BIOSを最新にすれば適用されますが、すでに劣化した個体は元に戻りません。対象製品は保証が購入から5年に延長されているので、中古で買うなら購入日と残りの保証期間を確認してください。新品で組むなら現行世代のほうが安心です。
まとめ・次に読みたい記事
CPUの性能比較で大事なのは、順位そのものより「どこから先は払っても変わらないか」を知ることです。
ゲーム性能の上位はX3Dが占めますが、9800X3D・9850X3D・9950X3D・9950X3D2の4モデルは実測でほぼ横並びでした。9950X3D2は両CCDに3D V-Cacheを載せた意欲的な構成で、制作では9950X3D比5〜10%伸びるものの、17ゲーム平均では+0.8%です。ゲームだけが目的なら62,000円の9800X3Dが上限と考えて構いません。
そのX3Dも万能ではなく、効くのはCPUがボトルネックになる場面に限られます。重量級では新しい非X3Dに逆転されることがあり、解像度を上げれば差は消えます。
予算を抑える側では、Core Ultra 5 250K Plusが38,980円でゲーム性能と多コア性能を両立しており、この価格帯では効率的です。ただしLGA1851は次世代と互換性がないため、あとからCPUだけ載せ替えたい人はAM5を選んでおくほうが安全です。



